母音

本の茶屋

昨日、降ったりやんだりの天気にもかかわらずHIPAHIPA&しかのいえに来てくださった9人のみなさま、誠にありがとうございました!北区上十条しかのいえです。

今日明日、5/6(木)と5/7(金)、しかのいえ本の茶屋は臨時休店です。

今週の土日にはまた店開きしますので、どうぞお越しくださいませ。

しかのいえ本の茶屋のご案内・アクセス

今年のゴールデンウィークも終わりましたね。

今日からまたお仕事、日常のルーチンにお戻りになるという方も少なくないのではないでしょうか?

ゴールデンウィーク中に開いていたしかのいえ本の茶屋は、今日明日とお休みをいただきますが、しかのいえ「そのもの」にお休みはありません。

少なくとも、カミさんと私の命が終わらない内は、しかのいえは続きます。

生きることと働くこととを、決して裂かずに暮らす。

これが、私たちがしかのいえを始めた時にした、ささやかな決意でもあるからです。

ですから、もしも何か御用があれば、いつでもご一報くださいね。

しかのいえのドアは開いていますので。

昨日の晩、ふと思い出して本棚から引っ張り出した詩集のページをめくっていて、ある作品に目が留まりました。

下に引用してみます。

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母音

~ある寂しい日私に与えて

新川和江

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信じていなさい

おまえののどとくちびるの温かさを

おまえが〈あ〉と言う時

どこかの暗い沼のふちの

葦のあいだで

澱んだ水が

〈あ〉

一万年にたったいちどの水泡(みなわ)を立てて独り言を洩らすと

 

信じていなさい

優しい死がこんやもおまえを抱きしめにくると

おまえが〈い〉と呟く時

かわいた川の

橋桁の

朽ちた楔のほとりで

〈い〉

しめし合わせたようにしばし立ちどまる風があると

 

信じていなさい

痛みはおまえだけのものではないと

おまえが〈う〉と呻く時

真夜中の劇場の

楽器置場の片隅で

コントラバスが

〈う〉

ひくく呻いて同じ苦痛の合槌を打ってよこすと

 

信じていなさい

おまえには名も無い多くの友がいると

おまえが〈え?〉と問い返す時

遠い森のいっぽんいっぽんの木が

答えのかたちに枝を撓(たわ)ませ

葉隠(はごも)りの小鳥たちが

〈え?〉

同じ疑問を一晩じゅうざわめきながら悩んでくれていると

 

信じていなさい

うたうことは決してむなしいことではないと

おまえが〈お〉と言う時

青草が

牝牛が

見えないものの影が

〈お〉

むっくり起きあがり おまえと一緒に歩き出すと

 

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どうやらここにあるのは、詩人の己への鼓舞だけではないようです。

読む者を深いところから活かすたおやかな抱擁や、巧まざるユーモアも滲んでいるように感じました。

あなたはどんな風にお感じになったでしょうか?

ではでは、また。

「暮らし」から「つながり」と「仕事」を作る実験室
暮らすLaboratory しかのいえ
公式サイト https://shikanoie.com

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