演奏を「役立てる」という視点

リコーダー教室

「どれだけ練習しても、ここで失敗すると思うと、必ず思った通りに失敗する」

2026年3月14日、土曜日、中川つよし先生の教室の、第8回「リコーダー独奏の会」の後の反省会で耳にした発言です。

人前での演奏のご経験も豊富で、素晴らしい演奏技術を持った方の言葉でした。

演奏中、

「ああ来る、くる」

と予感しながら堕ち込んでしまう、エアポケットのような瞬間が確かにあります。

意識の集中から指先や口の動きがぽろりと剥がれ落ちてしまうような瞬間が。

冒頭にご紹介した発言をした方の、発表会当日の充実した演奏ぶりを振り返ると、

「あのレベルまで行っても、まだこの悩みがあるのか……」

と、半ば絶望的な気持ちにもなります。

もちろん練習によって、そういう瞬間を減らすことはできます。

むしろ練習は必須なわけですが、でもそれだけでは超えられない「壁」がある。

「練習だけではたどり着けない、人前で演奏することによって初めて到達できるレベルがある」

これは、中川先生が以前おっしゃっていたこと。

折に触れて納得しています。

練習、本番、そしてまた練習し新たな本番を迎える。

上達のために、この往復が有効であることは経験的に疑いようがありません。

実際、私はもう三十年近く、ほとんどこの行ったり来たりの中だけに留まり続けてきました。

しかし。

悲しいかな、まだ何かが足りない。

この繰り返しだけでは突破できない「第二の壁」があるのでは。

仮に今日上手くいったとしても、明日を保証してくれるものは何もない。

どこまで行っても、神ならぬ身におそらくエアポケットはやって来る。

この懸念を払拭できません。

私は不用意に、長く時間だけをかけすぎてしまったのかも知れない……

かつて「上手(間違えない)」だけを目指す練習のレベルから、「聴いていただく」を目指す練習へ重心が移ることによって、視野に入って来るポイント、気を配るべきポイントは格段に増え、演奏の質は間違いなく上がりました。

移り行きは、とても自然にこの身に起こりました。

本番で観客を務めてくださったみなさんの「耳」のおかげです。

きっと、さらなる向上をもたらす何かは、この移行の延長線上にあるに違いない。

そう考えていた時のことです。

早春の木々の枝に新芽が萌すように、「役立てる」という言葉が思い浮かびました。

観客の耳に音楽を届け、ただ聴いていただくことの先に。

届けた音楽を観客の喜びや楽しみのために「役立ててもらう」ことがあるのではないか。

そのための工夫や準備を通じて、初めて開けてくる演奏の地平があるのではないか。

これまでお客様の耳にたくさん助けられ、力をいただいてきたことに報いる努力を、本格的に始めるべきではないか。

湧き上がる喜びをこの胸に湛えて演奏の場に臨むことは言わずもがなとして、自分の演奏を端的に人様の「役に立てる」ための行動が必要なのでは。

この方向に、あの嫌なエアポケットを根本的に乗り越えるための、大切なヒントが横たわっているような気がしてなりません。

来週、長くお付き合いをいただいている、リコーダー仲間に会う予定です。

話をし、意見をもらいながら、今後進むべき方向を探りたいと思います。

ではでは。

◆3/14発表会の演奏動画◆

あの日あの時、あるいはこの動画に耳を傾けてくださったみなさんに、改めて心から感謝申し上げます。

ありがとうございます。

何とかお返しができないかと、目下思案中です。

「暮らし」から「つながり」と「仕事」を作る実験室
暮らすLaboratory しかのいえ
公式サイト https://shikanoie.com

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