これから消える本 これからも残る本 05

本の出版

昨日2/22にアップした
こちらの文章の続きです。

「本」がサポートしてくれる
三つ目の行為「引越し」の続きです。

もう少し具体的に、
つっこんだお話を。

よろしければご一読ください。

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【これから消える本 これからも残る本】

◆2.本が助ける「4つの行為」とは?④◆

……先ほどの一覧で言うなら、
これは3のレベルにあたります。

人気ブロガーが書いた
一人ぐらしのノウハウ本、
有名企業の人事担当100名と
昨年就職したばかりの
フレッシャー100名への
詳細なリサーチを基に
まとめられた就職ガイド、
カリスマ経営者の書いたビジネス書、
一日一分のエクササイズで
信じられないくらい
体調が良くなる健康法を紹介した本、
ニューヨーク・セレブの間で話題の
まったく努力を必要としない
ダイエット法を公開する本等々、
求められている
いろいろな「引越し」に、
それぞれ応じてくれる
多彩な本があります。

実際、
特定の「引越し」に
本当に役立つ
総合的な情報を持った著者と、
その情報をしかるべき形に
加工できる編集者が
タッグを組んで作った本は、
出版不況が叫ばれる今でも、
多くの読者から大歓迎されています。

現時点での、
単行本出版の主戦場は
この3のレベル、
「引越し本」のゾーンにあると
言ってもいいでしょう。

『どんなに体がかたい人でも
ベターッと開脚できるようになる
すごい方法』(Eiko)が
ミリオンセラーになった時、
私はそんなにも多くの人が
「開脚できる人」への引越しを
求めていたのかと
心底びっくりしました。

ミリオンセラーの自己啓発書
『夢をかなえるゾウ』で
一躍有名になり、
ミリオンシリーズ
『うんこドリル』を生み出した出版社
・文響社の創業にも関わった
作家の水野敬也さんが、
今から10年以上前、
兵庫県伊丹市にある書店
ブックランド・フレンズさんの
店頭で行った講演会で、
作家としての心得を
こんな風に語ったそうです。

「読む前と読んだ後で、
読者の心の中で
何かが変わっていることを
目標にして自分はものを書いている」。

読前と読後で
読者の心が変わってしまう本、
そしておそらくは、
心の変化によって
今までとは
まるで違った世界へと
運び込まれたように感じる本。

『夢をかなえるゾウ』などは
まさにそんな一冊ですが、
これはそういう本作りを
目指しているという意味でしょう。

水野さんが
意識しているかどうかは不明ですが、
彼がある種の
有効な引越しツールとなる本の、
優れた作り手の一人であることは
間違いありません。

先ほどレベル1の
「暇つぶし」の項でも見た通り、
日常生活の中での
小さくスピーディな情報提供では、
「本」はスマホという精密機器に
あっさり負けます。

暇つぶしに限らず、
たとえば、
移動や待ち合わせの精度を
保ったりするための
小さな情報を得るなど、
日常をつつがなく
回していくために、
次々と受け取られては
流れて消えていく
断片的な情報(フロー情報)の
提供では負ける。

しかし、
私たちが新たな望ましい状況や状態に向けて
上手に移動する(引越す)
ための情報提供では、
本というシンプルな紙の束はまだ勝てる。

より深く、
より有機的・体系的に組織され、
フロー情報に比べて
耐久期間が長い情報
(ストック情報)の提供では
本がまだ勝てるわけです。

もしもあなたが、
2の「トリップ」とは
関係がないけれども
何らかのまとまった
コンテンツを持っていて、
それを「本」の形で
世に発信したいと考えているなら、
ぜひ自問してみてください。

「私が持っているこのコンテンツは、
読者のどんな『引越し』に
役立つだろうか?」

と。

難しそうなら、
この機会に今一度
考え直してみてはいかがでしょう?

なぜならあなたのコンテンツは、
続き物の短いコラムに小分けして、
然るべきウェブサイトや
SNSでシェアしていった方が、
より多くの読者に
喜ばれるかもしれないからです。

(つづきます)

「暮らし」から「つながり」と「仕事」を作る実験室
暮らすLaboratory しかのいえ
公式サイト https://shikanoie.com

コメント

  1. […] ひどくもどかしい。 こんな一文では全然追いつかない。 … これから消える本 これからも残る本 05 […]

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