これから消える本 これからも残る本 07

本の出版

2/24にアップした
こちらの文章の続きです。

「本」がサポートしてくれる
四つ目の行為「脱出」についての続き。

これまで述べてきた三つのレベルと
第四のレベルの間には、
質的な違いがあるようで……

よろしければご一読くださいませ。

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【これから消える本 これからも残る本】

◆2.本が助ける「4つの行為」とは?⑥◆

レベル3の「引越し」までの段階と
4の「脱出」とを
分けるものは何でしょうか?

行為の切実さに
強弱の違いがあることは
今述べた通りです。

しかし、それだけではありません。

「引越し」までのレベルから
「脱出」への移行は、
程度の違いだけでは説明できません。

そこには質的な飛躍があります。

レベル3までの行為で
読者から歓迎されるベネフィットは、
人気作家のミステリ作品や
最新のダイエット法、
仕事の効率が10倍アップする
手帳の活用法等々、
大抵は何らかの
具体的な手段によって
与えられるものでした。

しかし、レベル4の「脱出」では
事情が違ってきます。

まず、このレベルに応じられる
「本」を必要としている人の多くは、
慣れ親しんだ生活の流れを壊されたり、
奪われたりしています。

青天の霹靂、
予期せぬアクシデントによって、
悲しいかな私たちは
親愛なるルーチンから
いとも簡単に放り出されて
しまうことがあります。

夕方になって
突然降り出した雨が
みるみる町に溢れ、
あっという間に乗用車が、
自宅が水没する。

突然の病や事故に見舞われる。

隣人が起こす異様な犯罪に
巻き込まれることもあれば、
当たり前のように行き来していた
学校が、職場が、馴染みの店が、
何の前触れもなく
煙のように消えてしまうこともある。

朝、玄関先で「行ってきます」と言って
別れた大切な人に、
二度と会えなくなることさえあります、本当に。

レベル3までの読者の行為は、
現状を改善するためものです。

比較的安定した
生活の流れが前提としてまずあって、
読者はその流れに乗って
主導権をある程度握りながら
動くことができる。

しかしレベル4に至って、
読者が真っ先に強いられるのは
何らかの「行為」ではなく「無為」です。

生活の流れを保つ基盤を
脅かされ、はぎ取られ、
為すすべもなく
独り立ち尽くすことです。

そういう人に、
たとえばイケメンのドクターが教える
最新の健康法が、
人気経済評論家が語る
ふるさと納税の賢いやり方が、
テレビでもお馴染みのセラピストが明かす
「第一印象を劇的に良くする話し方」が
一体何の役立つというのでしょう?

(つづきます)

「暮らし」から「つながり」と「仕事」を作る実験室
暮らすLaboratory しかのいえ
公式サイト https://shikanoie.com

コメント

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