去年のちょうど今頃。
会社を辞めることを決め、
さてこれから
どうやって生きていこうと
考えていく中で、
長く携わってきた「本」の仕事にも、
やはり何らかの形で関わっていきたいと
強く思いました。
そこで、
これまでの経験や
生活者としての実感を踏まえて、
「本」の業界が
この先どうなっていくのか、
文章に書いて
自分なりに見晴らしてみたのです。
その上で、
「本」と自分の今後の関り方を
見定めたかった。
文章は結局16,000字近くなってしまい、
ウェブサイトにはとてもそのまま
アップできそうもなかったので、
ご希望の方にPDFで
お送りしているのですが、
小分けにしてこちらにもアップしてみます。
……さあここから、長い道のりですよ。笑
今日はその第一回、
「本」の世界の現状について。
よろしければぜひご一読を。
なお文章冒頭のカレンダーは、
ほぼ一年前とご理解ください。
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【これから消える本 これからも残る本】
◆1.なぜ「本」は生き残っているのだろう?
2019年・令和元年現在、
出版業界全体の売上が縮小を始めて、
既に20年以上の時間が経過しています。
「出版不況」という状況は、
一過性のものではなく、
今や後戻りの利かない
「傾向」だと言わざるを得ません。
書店様、取次様、出版者様の
倒産・転廃業のニュースには
本当に胸が痛みますが、
残念ながら、
最早決して珍しい話ではなくなりました。
一体なぜ、
こんなことになってしまったのでしょうか?
日々の生活の実感を基に、
誤解を恐れずにあえて一言で言うなら、
前世紀末に端を発する
インターネット・コミュニケーションの
怪物的な台頭によって、
これまで業界を支えてきた
「雑誌」と「コミック」というツートップが
致命的な打撃を受けたこと、
これが最大の元凶でしょう。
では、なぜ打撃をうけたのか?
ビジネス、教育、家事、医療、
娯楽、カルチャー、レジャーなどなど、
私たちの生活のあらゆるシーンを、
より便利に、より快適に回していくために、
各種の実用情報・商品情報は
今や欠かせないように見えます。
それは消費という名の
巨大な機械を効率よく
作動させるための潤滑油であり、
欲望という名の猛獣を
活気づかせるための血液です。
その大切な情報の提供者の
ポストを争う闘いで、
紙の媒体である雑誌と
リアルの流通網である書店(・コンビニ)は、
情報の量、鮮度、スピードなど、
いくつかの大切なポイントで
スマホとインターネットに負けたのです。
そしてコミックは、
今や盛大に電子書籍化し、
紙の束は、
コンテンツを盛りつける
器の地位をスマホに奪われつつあります。
しかしその一方で、
数こそ多くはないものの、
単行本のミリオンセラーは生まれ続け、
読者の心を掴んでいます。
ジャンルを問わず
数万部クラスのミドル級の売れ筋本も
着実に読者を喜ばせ続けている。
時代や社会・文化的な差異を超えて
生き残った「古典」と呼ばれる本たちも、
依然として私たちの心を温め続けています。
情報伝達ツールとしての
本の悲しい凋落も事実なら、
こうした諸々の事柄もまた
厳然たる事実です。
ネットの圧倒的な利便性と
薄気味悪いほどの神出鬼没ぶりにも
殺せない何かが「本」にはあった。
ビジネスの規模や売り上げの多寡という、
量だけでは決して計り切れない力を
本が持っていた。
そう考えるのが
自然ではないでしょうか?
ではそれは、何なのか?
(つづきます)
「暮らし」から「つながり」と「仕事」を作る実験室
暮らすLaboratory しかのいえ
公式サイト https://shikanoie.com
コメント
[…] 昨日2/19にアップした こちらの文章の続きです。 […]