これから消える本 これからも残る本 02

本の出版

昨日2/19にアップした
こちらの文章の続きです。

「本」の力とは?

「本」の役割とは?

よろしければご一読ください。

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【これから消える本 これからも残る本】

◆2.本が助ける「4つの行為」とは?◆

……ネットの圧倒的な利便性と
薄気味悪いほどの神出鬼没ぶりにも
殺せない何かが「本」にはあった。

ビジネスの規模や売り上げの多寡という、
量だけでは決して計り切れない力を
本が持っていた。

そう考えるのが
自然ではないでしょうか?

ではそれは、何なのか?

私たちが出合うあらゆる商品は、
私たちの生活の中に置かれています。

本という商品もまた例外ではありません。

そして、大抵は繰り返しのリズムや
ルーチンの流れを持つ私たちの日常の中で、
本は主にこの一覧の画像にある
4つの行為をサポートしてくれています。

本の力は、このサポートを通じて
遺憾なく発揮されており、
私たちはその恩恵を日々受けているのです。

いかがでしょう、
ピンときますでしょうか?

もちろんこれは、
調査・研究・記録などを主目的とする
専門書や学術書の世界には、
必ずしもそのまま当てはまりません。

また、文学的・芸術的な作品などが
発生させる繊細かつ多様な諸効果と、
その高度な受容にも
そのまま重なるものではありません。

主として、
リアル書店の店頭や
インターネット書店のページなどを介した、
生活人たる一般の読者と、
その日々の明け暮れを支える
「本」たちの日常的な接し方に
関わるお話になります。

以下、順を追って説明してみます。

《レベル1・暇つぶし》

私たちは朝目が覚めると、
それぞれの日常に取り巻かれています。

見なれた部屋の天井、家族の顔、
いつもの町並み、学校、職場……。

多くの人は、そうでしょう。

昨日も一昨日もそうだった。

だから今日も明日も明後日も、
同じ世界の中で
同じようなことが繰り返されるだろう。

そう信じて私たちは毎日を送っています。

イレギュラーなイベントやレジャーの予定が、
ゆるんだ意識を時々揺さぶることはあっても、
私たちはおおむね、
時計の針の律儀な進行と
日常世界の堅固な在りように
寄りかかって生きている。

満員電車で勤務先に向う
ビジネスマンが乗っているのは、
電車だけではありません。

何よりも彼は、
彼自身を運ぶ日々のルーチンという
ベルトコンベアに乗っている。

A地点からB地点、
B地点からC地点まで、
最新式の乗用車の
自動運転もかくやというほど、
ほぼ無意識のうちに移動は完遂され、
最後に彼はいつもの部屋の
いつもの布団にもぐりこみ、
目を閉じてまた朝を待つのです。

こうした決まり切った繰り返しの中に、
「本」の出番はおそらくあまりありません。

ちょっとした退屈や憂鬱や寂しさを
紛らわせるための小さな情報を、
すきま時間にスマホやらタブレットやらで
ネットからひょいひょいと拾えば事は足ります。

あるいはゲームをしたり、
SNSで知り合いとやりとりしたり
するのもいいでしょう。

電子書籍のコミックを
読むのも悪くありません。

そうしておけば、
お馴染みの平安と予定調和が
破られることはない。

私たちは、
慣れ親しんだ人々や世界との接触を
難なく保っていられます。

先ほどの一覧表で言うなら、
ここでスマホやタブレットが
サポートしているのは
1の「暇つぶし」です。

日常生活をなるべく快適に
流すための小さな行為です。

もちろんここに
本が割り込むこともできますし、
割り込んでもいます。

満員電車の車中、
一心不乱に自前のデバイスを
いじっている人たちに混じって、
文庫本や新書を読んでいる人が
時々いますよね。

極々まれに、
ハードカバーの単行本を読んでいる人もいる。

そういう人に出会うと
私は本当に嬉しくなります。

でも、悲しいかな余りにも少ない。

「暇つぶし」の世界で、
本の旗色はかなり悪いです。

今、このレベルで役に立つコンテンツを
本という器に盛って成功するためには、
余程の工夫と情熱が必要でしょう。

(つづきます)

「暮らし」から「つながり」と「仕事」を作る実験室
暮らすLaboratory しかのいえ
公式サイト https://shikanoie.com

コメント

  1. […] 昨日2/20にアップした こちらの文章の続きです。 […]

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